災害リスクマネジメント

防災投資と災害リスクマネジメント(産官学連携)

 INFORMATION

2007.12.3-4 京都大学主催国際会議

第1回 アジアにおける巨大リスクに対する保険に関する国際会議
(1st International Conference on Asian Catastrophe Insurance)
が、

京都大学吉田キャンパス 百周年時計台記念館
にて開催されました。

会議プログラムはこちら


 


災害リスクマネジメントの体系化を目標とし,以下の4つの視点から分析しています.


1)災害リスクの特徴
 地震,洪水等の災害リスクは,発生する頻度は非常に少ないが(希少性),一度災害が発生すればその被害は被災地域全体に及び(集合性),被災地に大規模な損失(巨大性)をもたらすという特徴(カタストロフ性)を持つリスクです.例えば,首都地域では,関東大震災クラス(M8)の地震は200~300年間隔で発生しているが(中央防災会議),もし,このクラスの地震が発生すれば被害額は100兆円以上に及ぶという推計もあります.また,一度災害が発生すれば,人命損失の可能性や,流動性制約 に直面した場合には,復旧の遅れによる長期間の生活水準の低下等の不可逆的な被害が生じる可能性があります.

2)災害リスクのヘッジ手法
 このような特徴を持つ災害リスクに対して,どのようなリスクマネジメント が適切であるといえるのでしょうか?リスクマネジメントの技術は大きく2つに分類することができます.1つは,社会の損害の総和の軽減を目的としたリスクコントロールです.これは,例えば,事前の防災投資,防災対策により構造物を強化し物理的に災害に対する抵抗力を高めること等が挙げられます.1つは,個人間の損害の再分配を目的としたリスクファイナンスです.これは,例えば,地震保険 による保険市場を通じた個人リスクの分散や,災害債券による資本市場を通じた集合リスクの分散等が挙げられます.適切なリスクマネジメントを達成するためには,相互依存関係下にあるリスクコントロール手法とリスクファイナンス手法を効率的に組み合せた,総合的なリスク管理体系の構築が求められます.

3)災害リスク以外のリスクの存在;マルチプルリスク
 家計,企業が曝されているリスクは災害リスクだけではありません.例えば,家計は病気や事故等のリスクにも曝されています.また,企業は製造物責任,地盤汚染 ,情報漏洩等の事故・過失に係わる(純粋)リスクや,事業戦略,営業戦略,金融市場変動リスク等の企業経営上の意思決定に係わる(投機的)リスクにも曝されています.このように,家計,企業は複雑な相関関係を持つ多種多様な複数のリスク(マルチプルリスク)に曝されています.家計,企業はこのことを考慮し,適切なリスクマネジメントを達成することが求められます.

4)企業資産マネジメント
 度重なる企業の会計不祥事等の問題を背景に,日本版SOX法が施行され,企業は財務報告に係る内部統制の評価と報告が義務付けられることとなりました.3)で記述したように,企業は純粋リスク,投機的リスクを含む様々なリスクに曝されており,このことを考慮した適切な内部統制の構築が重要となります.以上のことから,企業はリスクマネジメントと内部統制を統合した,全社的リスクマネジメントが求められます.

 

【この研究にかかわっている学生】 

 

研究テーマ: 災害経済学 リスクファイナンス 災害リスクマネジメント 企業資産マネジメント

 

== 関 連 論 文 ==  (赤文字はダウンロード可能or土木学会HPにリンク)

横松宗太,小林潔司,1999,非可逆的リスクと防災投資の経済便益評価,土木計画学研究・論文集,No. 16pp. 393-402. pp.591-600.

小林潔司,横松宗太,2000,カタストロフ・リスクと防災投資の経済効果,土木学会論文集,No. 639/IV-46pp. 39-52.

小林潔司,横松宗太,2000,治水経済評価のフロンティア:期待被害額パラダイムを越えて,河川技術に関する論文集,第6巻,pp. 237-242.

横松宗太,小林潔司,2000,自治体保険による地域間最適災害リスク配分,土木計画学研究・論文集,No. 16pp. 369-380.

横松宗太,小林潔司,2000,防災投資による物的被害リスクの軽減便益,土木学会論文集,No. 660/IV-49pp. 111-123. 

小林潔司, 横松宗太, 織田澤利守, 2001, サンクコストと治水経済評価: リアルオプションアプローチ, 河川技術に関する論文集,第7巻, pp. 417-422

横松宗太,小林潔司,田中一央,2001,分権的防災投資と地域間災害リスク配分,土木計画学研究・論文集,No. 18(2)pp.275-286

小林潔司,湧川勝己,田中勉,幸弘美,肥田幸子,2002,壊滅的洪水リスクの回避と費用便益分析,河川技術論文集,第8巻,pp. 161-166

小林潔司,横松宗太,2002災害リスクマネジメントと経済評価 ,土木計画学研究・論文集,Vol.19No. 1pp.1-12. 

横松宗太,小林潔司,2002,災害復旧のための財政調達,土木計画学研究・論文集,Vol.19No. 2pp.265-274.

大西正光,横松宗太,小林潔司,2005流動性リスクと地震保険需要,土木学会論文集,No.793/IV-68pp.105-120.

横松宗太,小林潔司,2005,災害保険,被災者支援制度と住宅選択,都市計画学会論文集,No.40pp.175-180.

湧川勝己, 小林潔司, 幸弘美, 伊藤弘之, 2006, 洪水氾濫による精神的被害と流動性被害に関する研究,河川技術論文集, Vol.12, pp175-180.

湧川勝己,小林潔司,幸弘美,矢野定男,伊藤弘之,2007,洪水氾濫による精神的被害及び流動性被害の研究-浸水被害実態の治水経済調査への反映を目指してー,河川技術論文集,第13巻, pp.427-432.

小林 潔司, 湧川 勝己, 大西 正光, 伊藤 弘之, 関川 裕己, 2007, 世帯の復旧資金の調達と流動性制約, 土木学会論文集D, Vol. 63, No. 3, pp.328-343

 

関川裕己,湧川勝己,大西正光,小林潔司,2007,  家計の流動性制約が水害家計の復旧過程に及ぼす影響,都市計画論文集,No.42-3, pp.631-636.

 

横松 宗太, 湧川 勝巳, 小林 潔司、2008, 家計の流動性制約と防災投資の経済評価, 土木学会論文集D, Vol. 64, No. 1, pp.24-42.

 

湧川勝己,小林潔司,大西正光,関川裕己,2008, 水害時における家計の流動性被害評価手法,都市計画論文集,No.43-3, pp.703-708.




 

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