卒論研究テーマ 複数リスク下の企業の流動性需要と保険需要
1、学歴
京都大学工学地球工学科 卒業
京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻 (在学中)
2、趣味
テニス、旅行、エレクトーン等
3、海外訪問国
オーストラリア(ホームステイ)
シンガポール(中継、観光)
タイ(研修、カセサート大学)
中国(短期留学(南京大学)、観光)
インド(観光)
( 2008.9現在の研究の途中経過) 近畿地方整備局 研究発表会 発表用の資料はトップページに掲載
「予測情報の不確実性を考慮した、防災担当者の意思決定について~外水被害からの避難~ 」
災害対策本部は、住民の安全を守るため、「避難勧告」を発令する。
住民の避難に必要な時間を十分に確保しようとすると、災害発生の不確実性の高い情報を用いて、避難勧告を発令しなければならず、避難の勧告の「空振り」は増加する。
一方、被害発生が確実な情報を待ってから発令した場合、住民の十分な避難時間は確保できない。対策本部はこのようなジレンマを抱える。
本レポートでは、対策本部の意思決定のメカニズムを分析し、避難勧告発令を早める方策について検討した。
さらに、「空振り」を抑えながら住民の避難の十分な時間を確保する、避難勧告の新基準の必要性を指摘し、その策定方法を提案した。
1、避難勧告の発令新基準の策定の必要性
自治体が市民のための判断を適切な時期に行うためには、あらかじめ基準を作成しておくことが望ましい。
大きな理由は、判断の責任を「基準に転嫁」できるからである。
現在も河川の水位情報を基にした、基準はある。しかし、住民の安全な避難時間を確保する上で、十分な時間を確保できているとは必ずしもいえない。
不確実性の高い予測情報をうまく利用し、「空振り」を抑えながら避難時間を確保する新基準の策定が必要である。
2、避難勧告の適切な判断の時期
不確実な情報をもとに判断しなければならないので、当然「空振り」を覚悟しなければならない。しかし、「空振り」は社会的な損害も大きい上に、「空振り」が続くと、「狼少年」と同じで住民が信用しなくなる。
予測情報の表す危険度(危険発生の確率)と、避難の必要性(地点別危険度と災害弱者)を考え合わせて、避難の必要性の高い場所、人は早期に(危険発生の確率が低い段階)で避難しなければならない。
現在でもある程度おこなわれているが、実際にどの程度の危険度の場所を、どの程度の情報で避難させるかの検討が十分ではない。これは自治体にとって、非常に難しい判断である。リアルオプションである。
3、国土交通省が提供できる水害発生の予測データによる避難勧告基準
国土交通省は、河川やダムの詳細な情報、河川、ダムの水位(予測)の情報、これまでの経験を保有しており、自治体が外水被害からの避難勧告を出す際、非常に重要な判断の根拠となる情報を提供する。
しかし、その情報の危険度はなかなか理解しにくい。例えば、計画高水位を超える確率が何パーセントといった客観的な確率が出るわけではない。国土交通省の職員と自治体トップとの間に相当な認識のずれが生じることは、容易に想像できる。自治体のトップは、必ずしも情報の内容を正確に理解し、最適なタイミングで避難勧告がだせるとは限らない。事前に水害時にどのような情報が自治体に提供可能なのか。そして、それらの情報をどのように避難勧告発令に役立てるのかを事前に整理し、基準を決めておくことが適切な判断を助ける。自治体がその基準を定めるための指針を国が作成し、自治体にアドバイスするやりかたが効果的ではないかと考えられる。
4、予測情報の危険度の正確な把握の必要性
例えば、河川の水位予測情報はそれぞれの河川、地点、気象条件で情報の正確さは異なる。現在は中央値のみが自治体に伝えられる。予測情報の不確実性を考慮した段階的避難を実施する際には、その情報の不確実性を正確に把握する必要がある。例えば、この河川のこの地点で、この気象条件の何時間後の予測はどの程度正確かを評価する必要がある。
5、地点別の総合的危険度評価
外水被害時の地点別の総合的な危険度を評価しなければならない。1、速い流速が予測される、2、破堤後すぐに浸水する、3、深い浸水が予測される、4、避難所(安全な場所)から遠い、これらを総合的に考えて、その地点の危険度を割り出す必要がある。
6、予測情報の不確実性を考慮した、自治体の意思決定(避難勧告の発令)
それぞれの地点の危険度に応じて、判断の根拠にできる情報を定める。危険度の高い場所ほど早期の(空振り多)避難となるようにする。現在でも行われている例があるが、時期の選定が十分でない。この判断時期の選定は非常に高度な判断となる。混乱した災害時に自治体は判断しなければならない。あらかじめ、現在よりも詳細な基準を作成しておくことが切に望まれる。
この基準を作成するためには、1、予測情報の不確実性の評価。2、地点別の危険度の総合評価。3、地点別にどの程度の情報を用いる(どの時期に判断する)かを定める経済分析。1から3についての研究が必要になる。
最終更新日 2013年2月22日(金曜)13:52