コーディネーション論

金融決済技術を活用した交通管理施策

IC交通技術を交通料金の決済方法として導入することにより,直接的には

  1. 料金支払いの簡素化
  2. 価格体系の高度化・多様化

といった効果が期待されますます.情報通信技術の発展が高度な金融決済処理(クレジット処理)の実現を可能にしていますが,このようなクレジット機能を背景 として,たとえばマイレージ制度に代表されるように,消費者の交通行動と消費行動を同時にバンドリングすることが可能になっています.その意味で、クレジ ットサービスを、関連主体の情報クラブと考えることができます. 交通行動と消費行動のバンドリングサービスを情報クラブと位置づけることにより,交通サ ービスの金融決済がもたらす間接的な効果を分析することができます.

いま、個人がある交通企業が提供するサービスに対するクレジット機能を利用することは、とりも直さず「その個人がサービスの高頻度の消費者である」という 個人情報を情報クラブに開示することです.一方,情報クラブに参画する企業は,情報クラブに所属する顧客に対して集中的にサービス情報を提示することによ り,効率的な情報提供を行うことができ,情報伝達費用を大幅に削減することができます.

また,情報クラブに交通企業とサービス企業が同時に加入することにより,それまで個別に行われた交通サービスとサービス消費行動が,情報カード機能を通じ て互いにバンドリングされます.これにより、時間空間的な場で実施される交通行動と消費行動が互いにリンケージされる機能(以下デマンドチェーン機能と呼 ぶ)が期待されます.さらに,情報クラブの中でマイレージや独自の地域通貨が発行されるなど内部貨幣の流通機能が発生する可能性もあります.

このように、IC技術の導入による交通サービスの金融決済方法の高度化がもたらす効果は極めて多様ですが、これらの効果は

  1. 取引費用の削減効果
  2. 価格体系の多様化効果
  3. 情報費用の低減効果
  4. ディマンドチェーン効果
  5. 内部貨幣の流通効果

に整理することができます.このような効果は、消費者行動の時間的・空間的なパターンに対して大きな影響を及ぼすことが可能であり,交通管理政策, さらには都市政策としても重要な政策ツールと位置づけることができます.本研究では,交通サービスにおける金融決済方法の高度化が,消費者の交通・ サービス消費行動に及ぼす影響を分析する方法論を提案するとともに,金融決済方法を活用した交通管理政策や都市政策の有効性に関して有用な知見を 得ることを目的とします.

 

 

参考資料

交通決済システム

 

日本学術振興会 科学研究費 基盤研究C「金融決済方法を考慮した交通管理政策の経済効果に関する研究」報告書

関連する論文

北野喜正,西田純二,小林潔司,松島格也,2006,事前・事後割引料金システムの経済評価,土木学会論文集D,Vol.62, No.4. pp.638-656.

小林潔司,松島格也,菱田憲輔,2008,・予約システムの経済便益評価,土木学会論文集D, (登載決定)

関連する研究会

交通経営マネジメント研究会

研究担当者

菱田憲輔

最終更新日 2013年5月06日(月曜)20:28

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