計量リスク評価

道路付帯施設

 担当 : 青木一也 株式会社パスコ研究開発センター e-mail:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

1)研究概要 

道路付帯施設のアセットマネジメントは,橋梁や舗装等の土木施設に比べ,これまであまり馴染みがなかった分野ではないだろうか.しかし,高速道路上の道路付帯施設を考えていただきたい.例えば,トンネル内の照明器具や消火栓等の非常用設備,渋滞情報等を提供している情報板等,道路利用者にとって安全で快適な運転を行うためにはなくてはならない重要な施設ばかりである.当然のことながら,これらの施設は他の施設と同様,時間とともに劣化が進行し,それを放置すればドライバーの快適な運転に支障をきたすばかりか大事故に繋がる恐れがある.そのため施設管理者は,施設の状態をモニタリングし,劣化状態に応じた補修や更新を適宜行っている.

道路付帯施設のアセットマネジメントでは,道路上に同種の施設が数多く設置されていることに着目し,それらの施設群の点検・補修・更新のタイミングを調節することで維持管理コストの縮減いわゆるライフサイクル費用最小化と,施設の故障リスクの最小化を同時に監視できる枠組みを考えた.施設管理者は管理目標である施設の故障確率を達成するための点検・補修・更新政策のなかから,ライフサイクル費用を最小にする政策を選択することが可能となった.そのことを,まずはトンネル照明システムを事例にとりあげ,実証的に分析を試みた.道路付帯施設は様々な性格を有するものが数多く存在しており,今後はこれまで開発した劣化予測モデル,最適補修モデルの応用を考えていきたい.

 

さらには,我々の研究グループでは,高速道路の大規模交通管制システムの更新問題について検討を始めた.情報システムのアセットマネジメントと位置づけることができる.交通管制システム等の大規模情報システムは細部の数多くの機器により構成されており,機器の故障によりシステム全体の機能停止,または道路利用者へ影響を及ぼす過程が複雑な構図を示している.機器の故障確率は時間とともに変化することから,その劣化過程をランダム比例ワイブルハザードモデルで表現するとともに,機器の故障の変化が情報システム全体の信頼性に与える影響を,動的フォールト・ツリーを用いて分析する手法を開発した.大規模交通管制システムの更新問題を客観的に分析することが目的である.

 

一連の研究は,土木施設のパフォーマンスを統計学的に表現する“アセットメトリクス”の考えに従うものである.今後はさらに,非観測事象に対する計量化手法の開発,さらには施設管理者間の合意形成ツールの開発を目標に研究を継続している.

 

2)関連論文

青木一也,山本浩司,小林潔司,2005,劣化予測のためのハザードモデルの推計,土木学会論文集,No.791/VI-67,pp.111-124.

 


青木一也,山本浩司,津田尚胤,小林潔司,2005,多段階ワイブル劣化ハザードモデル,土木学会論文集,No.798/VI-68,pp.125-136.


青木一也,山本浩司,小林潔司, 2005, トンネル照明システムの最適点検・更新政策,土木学会論文集,No.805/VI-69,pp.105-116

 

青木一也,山本浩司,小林潔司, 2006, 時間依存型劣化過程を有するシステムの集計的最適点検・補修モデル,土木学会論文集F,Vol. 62, No. 2,pp240-257

 

山本浩司,青木一也,小林潔司:道路付帯施設アセットマネジメントシステム,土木学会土木情報利用技術論文集,Vol.15,173-184,2006.10

山本浩司, 貝戸清之, 青木一也, 小林潔司, 菱田憲輔, 2009, 陳腐化を考慮した大規模情報システムの最適更新戦略, 土木学会論文集F, Vol.65, No.2, pp.264-283


津田尚胤,貝戸清之,山本浩司,小林潔司、2006、ワイブル劣化ハザードモデルのベイズ推計法,土木学会論文集F,Vol.62,No.3,pp.473-491


貝戸清之,山本浩司,小濱健吾,岡田貢一,小林潔司,2008,ランダム比例ワイブル劣化ハザードモデル:大規模情報システムへの適用,土木学会論文集F,Vol. 64, No. 2 pp.115-129


山本 浩司, 青木 一也, 貝戸 清之, 小林 潔司, 2008, 劣化現象を考慮した大規模交通管制システムの動的故障解析, 土木学会論文集F, Vol.64, No.3, pp.295-310.

Kiyoyuki KAITO, Kengo OBAMA, Kiyoshi KOBAYASHI, Kazuya AOKI and Koji YAMAMOTO: RANDOM PROPORTIONAL WEIBULL HAZARD MODEL: APPLICATION TO LARGE-SCALED INFORMATION SYSTEMS, Applications of Advanced Technologies in Transportation


Kazuya AOKI, Koji YAMAMOTO, Kiyoyuki KAITO and Kiyoshi KOBAYASHI:DYNAMIC FAULT ANALYSIS OF LARGE-SCALED INFORMATION SYSTEMS WITH REFERENCE TO COMPONET'S DETERIORATION, Applications of Advanced Technologies in Transportation

Yamamoto, K., Aoki, K., Kobayashi, K.: Asset Management Systems for the Facilities on the Highways, Journal of Applied Computing in Civil Engineering, Vol.16, pp331-343, 2007

 

最終更新日 2013年5月06日(月曜)20:00

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