社会資本は国民全体の資産(アセット)であり、その維持管理においては社会資本の耐用年数や劣化の過程、さらには社会資本が生み出す便益過程、社会資本に対する割引率の位置付け、維持補修に伴うライフサイクル費用とその不確実性を考慮に入れながら、社会資本の現在価値を最大化するようなアセットマネジメント戦略を立案することが課題となります。同時に、従来の仕様規定型維持補修契約から性能規定型維持補修契約 へとシフトし、先進的な技術の積極的な導入が必要となってきます。
社会資本の維持管理問題は、不確実な環境の下で投資のタイミングと規模を決定するという点で、金融オプションと類似した構造を有しています。金融工学理論を応用することにより、劣化過程、施設需要、災害といった多様なリスクを考慮しながら、期待ライフサイクル費用(又は期待純便益)という統一的な視点から維持管理戦略の経済評価を行うことができます。
また、多くの社会資本整備プロジェクトでは、社会・経済環境の変化を勘案しながら、プロジェクト実施のタイミングや順序を適切に見極める必要があり、ここにも金融工学理論のひとつであるリアルオプション理論の適用が可能です。このように、金融工学理論を適用することで、これまで単独の問題として別々に扱われてきた社会資本の維持補修、プロジェクト評価、構造物の性能設計、プロジェクトファイナンス、災害リスクマネジメント、キャットボンド等の問題を、土木システム全体の総合的なアセットマネジメント技術として体系化していくことを目標としています。
新規論文(投稿中)
・Sumi, T., Kobayashi, K., Yamaguchi, K., Takata, Y, 2008, Study on the applicability of the asset management for reservoir sediment management
・下村泰造,小林潔司,小濱健吾,貝戸清之,2008, 空港コンクリート舗装のハイブリッド劣化モデル
・坂井康人,荒川貴之,井上裕二,小林潔司,2008, 阪神高速道路橋梁マネジメントシステムの開発、
リンク: Journal of Infrastructure Systems , ASCE
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キーワード
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共同講
論説
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(文責:小濱)
最終更新日 2013年5月05日(日曜)21:26